函館稜北病院総合診療科抄読会B面

毎週木曜日5:30PMから30分間、Clinical Problem-Solvingを素材にクリニカル・パールを拾い集めます。

Clinical Problem-Solving、Jerome P. Kassirer、NEJM

いよいよ明日抄読会初日。読み進めていく連載の背景を知るために、Jerome P. Kassirer先生の年譜を中心に、NEJMの動静を年表にしてみた。

1933年 ニューヨーク州バッファロー市に生まれる。

1957年 バッファロー大学(UB)医学校首席で卒業

Buffalo General Hospitalで内科、New England Medical Centerで腎臓病学の研修

1961年 タフツ大学医学部で教職を得る。

▶︎ Acute glomerulonephritis. KASSIRER JP, SCHWARTZ WB. N Engl J Med. 1961 Oct 5;265:686-92

1962年 UB、ニューヨーク州立大学(SUNY)に吸収される。

1974-1991年 タフツ大学教授

▶︎ Clinical Problem Solving: A Behavioral Analysis JEROME P. KASSIRER, M.D., F.A.C.P.; and G. ANTHONY GORRY, Ph.D. [+] Article, Author, and Disclosure Information Ann Intern Med. 1978;89(2):245-255.

1979年 Arthur Elstein ”Medical Problem Solving: An Analysis of Clinical Reasoning” 出版

1982年 Daniel Kahneman、Paul Slovic、Amos Tversky共著 “Judgment Under Uncertainty: Heuristics and Biases”出版

1985年1月15日-1991年6月15日  “Clinical Problem-Solving” が"Hospital Practice"誌に78回にわたり連載され、これが  “Learning Clinical Reasoning” の元となった。

▶︎ Peter Szolovits, Jerome P. Kassirer, William J. Long, Allan J. Moskowitz, Stephen G. Pauker, Ramesh S. Patil, and Michael P. Wellman. An artificial intelligence approach to clinical decision making. Technical Memo TM-310, MIT Lab for Computer Science, Cambridge, MA, 1986.

1991年 “Learning Clinical Reasoning” 第1版出版。

1991-1999年 NEJM誌編集長を務める

1992年1月2日 NEJM誌に “Clinical Problem-Solving” の連載開始

1999-2000年 Marcia Angell、NEJM誌編集長に就任(のちに「ビッグファーマ、製薬会社の真実」を出版)」

2000年-  Jeffrey M. Drazen、NEJM誌編集長に就任

2004年 “On The Take: How Medicine’s Complicity With Big Business Endangers Your Health”

2005年11月3日 NEJM誌、ポッドキャスト配信開始。

2009年9月10日 NEJM誌、Interactive Medical Case開始。

2009年9月11日 ”Learning Clinical Reasoning” 第2版出版。

2011年4月11日 ”Manual de razonamiento clínico” 上記スペイン語訳出版。

2011年9月14日 「クリニカル・リーズニング・ラーニング」岩田健太郎訳出版。

2015年12月11日 函館稜北病院で抄読会が始まる。

まとめ

  1. Clinical Problem-Solving は、1970年代から続く人工知能認知科学認知心理学、医学教育と、学際的な研究・実践の成果である。
  2. 1812年以来の歴史とImpact Factorトップを誇るNEJMでさえ、ビッグファーマとの癒着が噂される。(NEJMに載っているからという理由だけでは、エビデンスにはならない。だからと言って、CAT式の抄読会は手間がかかりすぎるし、文献の選定にはリスクが伴う。従って、EBMは、二次資料で手を打つのが妥当。)
  3. チェスや将棋でコンピュータが人間を負かす時代になっても、ごくわずかの分野でしか診断における人工知能の利用は実現化していない。 (Gideonなど) 臨床推論は今後ともしばらくは医師にとっての食扶持である可能性が高い。なぜ、人間にできて、コンピュータにできないのか、そのへんに臨床推論のヒントがありそう。