函館稜北病院総合診療科抄読会B面

毎週木曜日5:30PMから30分間、Clinical Problem-Solvingを素材にクリニカル・パールを拾い集めます。

第26回:"In Sight and Out of Mind"

 タイトルは『文選・古詩十九首』の「去者日以疎」に相当する英語の諺 "Out of sight, out of mind."をもじったのでしょう。南山堂さんの訳は、「疎きもの、再び来たる」です。

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Word Count:2636語 (Time:  18'36'', 142 wpm)

参加人数:3名

クリニカル・パール:

  • The classic rash in patients with measles develops in a cephalocaudal and centrifugal distribution; if this pattern is described by the patient, it may provide an important clue. Of the prodromal symptoms known as the “3C’s” of measles — cough, coryza, and conjunctivitis.
  • Rocky Mountain spotted fever was reported in only 15 patients per 100,000 population in 2013, and cases of measles far outnumbered those of Rocky Mountain spotted fever in 2014.
  • Koplik’s spots are transient and are noted in only 50 to 70% of patients with measles.
  • Transmission through aerosolized droplet nuclei has been detected in closed areas for up to 2 hours after a person with measles occupies the area.

感想:

  • 本題は、麻疹でしたので、そこから珍しい感染症の話、Borrelia miyamotoiとか、日本脳炎とWNVとか、地元のロシア春夏脳炎ウイルスの話とかに話が広がりました。

統計言語 R のフロントエンド "Exploratory Desktop"

 前回、掲げたCSVファイルを使って経時的読解速度の推移を見える化してみる。R単体では、魔法の呪文のようなコマンドが必要な割に、グラフが綺麗ではないので、フロントエンドとして、"Exploratory Desktop" を利用した。課題の語数、分数、秒数から読解速度を計算するためのコマンド入力が必要だが、下記のごとく非常に自然なワンライナーで済み、それ以外は直感的なGUIで操作可能である。

mutate(WPM = WORDS/(MIN*60+SEC)*60)

f:id:kida-siro:20160707003122p:plain

 

 このグラフから週1回1記事20回程度読んだだけでは、読解速度の向上に資することがないことが一目瞭然である。

 そこで以前作成した例文集を毎日聴くことで、読解速度がどのように変化するか検証したい。ただ問題は、リスニングの習慣が身につくかどうか、応用行動分析学的アプローチも必要かもしれない。

 

Twitter との連携

 最近、感じている問題意識は、メンバーが忙しくてなかなか集まれないこと。そこで、集まれなくても、課題を読んで得たものをみんなに知らせることのできる場を設けました。気軽に、twitter で、#hakodoku のハッシュタグを使い、投稿してください。そうすると、このブログの右サイドバーに表示されるようにしました。

 これで札幌からも参加できますよ!

第25回:"A Bruising Loss"

 疾患は、稀でしたが、診断過程は捻られていないストレートパンチのケースでした。タイトルが "Bruising" というのも宜なるかな。「痣のできる」と「激しい」と双方の意味を掛けているのでしょうか。

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Word Count:2923語 (Time:  15'35'', 188 wpm)

参加人数:3名

クリニカル・パール:

  • A factor inhibitor should be suspected in any patient who has spontaneous bruising and an unexplained new elevation in aPTT, particularly if the aPTT fails to be corrected after the patient's plasma is mixed in a 1:1 ratio with normal plasma.
  • Many clinicians are familiar with the “5 Ps” that characterize the compartment syndrome (pain, pallor, paresthesias, pulselessness, and paralysis).
  • The titer of the factor VIII inhibitor is determined through the use of the Bethesda assay, in which the patient's plasma is serially diluted with normal plasma to measure the potency of anticlotting factor activity.

感想:

  • 全国的にはどうかわからないが、血液の疾患は、その疑い段階で専門家に委ねてしまうことが多く、一般医が経験することが少ない。そのせいか、苦手意識が強い。
  • 診断過程は意外と単純で、この疾患を知らなくとも、Google先生に相談したりして辿り着くことは出来そう。

第24回:"A Man with Fever, Cough, and Rash"

 有毛細胞白血病、スウィート病、肺結核、免疫再構築症候群と complex case です。縦隔鏡を実施するほどに肺結核を疑うことができるかどうかが分岐点でしょうか?

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Word Count:2882語 (Time:  17'32'', 164 wpm)

参加人数:4名

クリニカル・パール:

  • Although hairy-cell leukemia is primarily a disorder of B cells, T cells are also impaired. Since the IGRA and the tuberculin skin test rely on the presence of functional T cells, the patient’s response to these tests was probably insufficient for the establishment of a positive diagnostic result.
  • Although IRIS is most often seen during the treatment of HIV infection, it can also occur with the treatment of various other infections, including M. tuberculosis. The clinical improvement with glucocorticoids is consistent with the diagnosis of IRIS.

感想:

  • ツ反が陰性化する疾患の語呂合わせ:ツ反に過敏(過敏性肺炎)な猿(サルコイドーシス)負(麻疹)け確(結核)定(細胞性免疫の低下)。
  • あまりにも複雑なケースで実際に遭遇した場合きちんと診断できる気がしない。

CSV形式

 下記の例のように、一行目を項目名として、データの値をコンマで区切って並べたテキストファイルの様式を Comma-Separated Values (CSV) と称している。OSやソフトの枠を超え、可搬性に優れたデータの書式であり、エクセルでもCSVを入出力できるので、SQUIRREL project で扱うデータは、この形式で提供したい。

 下のものは、過去の抄読会の開催日、参加者数、課題の語数、私が読むのにかかった分数と秒数の一覧です。コピペして、適当なファイル名を付け、拡張子をcsvにすれば、データの移転はおしまいです。

DATE, PERSONS, WORDS, MIN, SEC
2015/12/11, 5, 2976, 15, 57
2015/12/18, 3, 2097, 17, 49
2016/1/8, 3, 3062, 20, 30
2016/1/15, 5, 2971, 15, 59
2016/1/22, 4, 3017, 12, 34
2016/1/29, 3, 3020, 16, 59
2016/2/5, 4, 2820, 22, 34
2016/2/12, 5, 3071, 27, 32
2016/2/26, 4, 3517, 35, 42
2016/3/4, 4, 2613, 16, 32
2016/3/18, 4, 2898, 15, 24
2016/3/25, 5, 2597, 13, 56
2016/4/8, 4, 2355, 18, 25
2016/5/19, 4, 2848, 17, 50
2016/5/26, 3, 2873, 22, 35
2016/6/2, 3, 3132, 19, 55
2016/6/9, 4, 2691, 25, 17
2016/6/16, 3, 2762, 15, 58
2016/6/23, 4, 2843, 16, 27
2016/6/30, 5, 2390, 17, 14
2016/7/7, 4, 2882, 17, 32

 

SQUIRREL project

 前回の抄読会で、Clinical Problem-Solvingのシリーズ244回のうち20回分(8.2%)を読んだことになります。それを記念して100個の例文からなる例文集とその音声を作りました。224回分すべての診断家の発言をコーパスとして、その中で出現する 4-gram を頻度順にソートし、上位100個のフレーズそれぞれに対し、1文10〜15語くらいの長さのものを例文として選んだ例文集です。さらに、例文集の mp3 音声を From Text to Speech のサービスを使って作成しました。fast、medium、slowの3種類のファイルがあり、それぞれ、152 wpm、140 wpm、122 wpm の速度で読まれています。著作権の問題もありますので、一般公開せず、医局のPCにおいておきますので、スクリプトを読みながら音声を聴く練習にお使いください。

 今後もこの例文集は、例文をより短いものや有益なものに入れ替えたり、例文の配置を変更したり、マイナーバージョンアップしていく予定です。

 さらに、例文集のスクリプトと音声を使ったトレーニングの前後で読解速度に差がでるかどうかデータの解析をしていくコースを開発予定です。名付けてSQUIRREL (Statistical QUality Improvement with R & Rational English Learning) project として密かに展開していく予定です。